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小説を100円で買った話

 

 

 

 

「69 sixtynine 文集」の画像検索結果

 

 

うちの近所にはよく行くマックがあって、その道路を挟んだ斜め向こうには左からチェーンの薬局、ハードオフ、大きいEのつくスーパー、そして2階建てのゲーム屋という、大学受験合格以外の言葉では土俵を割らせることなど、まったくもってE判定な場所がある。まさに栃木県宇都宮駅東である。

 

 

左から二つ目のハードオフは、地方都市の少ない娯楽の例に漏れずブックオフを併設する、これまた慶応大学センター試験利用入試合格以外の言葉では不合格にすることができない施設である。

僕みたいな、ギター歴二年から成長をやめてしまった進学校トップのギタリストは、こういった店の雑に売られたフェンダーの廉価版ギターなんかをフェルナンデスのアンプに通して店内にゴリラズを響かせて悦に浸るのが常だが、その日フィールグッドインクを口ずさんで店内に入ったときには、すでに楽器売場にはネットがかけられていて、僕は以前駅の楽器屋で4万円するウクレレをふざけてピックで弾いて、何倍も音楽に真摯に向き合ってるであろう店員にひどく軽蔑された目で「ご遠慮下さい。」と言われたことを思い出して、社会への反抗の火を一重の目の奥に静かに蓄えて、ネット越しのフェンダーを見つめた。

 

外出するときは、どんなときでもラジオをかけたイヤホンを耳から外さないのが僕のポリシーなので、そのときも社会への反抗の火でさえも左手を前に突き出す例のポーズをし始めそうな、オードリーのオープニングトークがビタースイートサンバに乗せて、繰り広げられていた。僕は以前若林が村上龍という作家のミソシルなんたらみたいな小説をネタにしていたことを思い出して、はじめて「ハードオフブックオフ」に足を向けたのである。進歩である。人類と科学の調和に他ならなかった。

 

驚くべきは値段であった、黒川博行のハードカバーが中古で千円を超えていたことでこの「オフ」への信用をなくした僕の濁ったコカイン中毒の目に映った、中古100円の文字であった。100円といえば購買の冷凍バナナケーキの値段である。冷凍バナナケーキが池井戸潤なわけで、まさに倍返しである。以外にも名前順に整序的に並べられていたので、詰まるところ村上龍池井戸潤の1m先に並んでいた。目当てであったミソシル~があったが、表紙を見たら怖そうだったので棚に戻した。隣に真っ黒い、何の絵もついていない文春文庫出版の小説があった。あらすじには、バリケード封鎖などの言葉が並んでいて、先月学生運動の映画を見ていた僕は、村上龍童貞をこの作品に捧げることに決めた。

 

「69sixty nine」という題名だった。